「外国に住んでいる家族は、扶養に入れられますか?」
「出稼ぎで来日している外国人従業員の年末調整、どこまで確認すべき?」
年末調整や確定申告の時期になると、海外在住の家族(国外居住親族)に関する相談が急増します。 結論から言うと、外国に住んでいる家族でも、一定の要件を満たせば扶養控除を受けることは可能です。
ただし、国内居住の場合と比べて要件が厳格化されており、用意すべき書類も多いため注意が必要です。この記事では、実務目線で分かりやすく解説します。

そもそも「扶養控除」とは?
扶養控除とは、生計を一にする親族がいる場合に、所得から一定額を差し引ける制度です。適用されると所得税や住民税の負担が軽減されます。
1. 外国居住者でも扶養に入れられる条件
扶養控除の可否は「居住地」ではなく、日本の税法上の要件を満たしているかで判断されます。
① 親族であること
- 配偶者
- 6親等内の血族、3親等内の姻族(子、父母、祖父母、兄弟姉妹など)
② 生計を一にしていること
外国に住んでいても、常に生活費や学費を送金し、実質的に生活を支えている必要があります。
→「送金関係書類」が必須となります。
③ 合計所得金額が48万円以下であること
- 給与のみの場合:年収103万円以下
- 注意点: 日本国内の所得だけでなく、現地の所得も含めて判定します。
2. 【重要】30歳以上70歳未満の制限(2023年改正)
現在、30歳以上70歳未満の親族については、以下のいずれかに該当しない限り、扶養控除の対象外となっています。
- 留学生(外国における留学)
- 障害者
- 38万円以上の送金を受けている者
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0022009-107_01.pdf
3. 実務で必須となる2つの書類
外国居住親族を扶養に入れる場合、以下の書類を会社へ提出(または確定申告書に添付)する必要があります。
- 親族関係書類
- 戸籍謄本、出生証明書、婚姻証明書など。(※外国語の場合は日本語訳が必須です。)
- 送金関係書類
- 銀行の送金控、クレジットカードの利用明細など。
- ポイント: 「家族まとめて1人に送金」は認められません。扶養に入れる親族それぞれの名義に対して送金している必要があります。
4. よくある質問(Q&A)
Q. 手渡しで生活費を渡した場合は?
A. 認められません。必ず銀行や送金代行業者など、客観的な記録が残る方法で行う必要があります。
Q. 仕送りは年1回でも大丈夫?
A. 法律上「回数」の規定はありませんが、年1回少額のみの場合、税務署から「生活を支えている(生計同一)」とみなされないリスクが高いです。毎月、あるいは数ヶ月に1回など、定期的な送金実態が望ましいです。
Q. 会社は書類を保存するだけでいい?
A. 給与所得者の扶養控除等申告書に添付された書類は、会社が確認し、適切に保管(原則7年間)しておく必要があります。
5. まとめ:実務上の否認リスクを避けるために
「扶養に入れたつもりが、後から否認されて追徴課税になった」というケースは少なくありません。
- 「日本人と同じ感覚」で処理しない
- 親族ごとの個別送金と書類管理を徹底する
- 所得要件(海外所得)を本人にしっかり確認する
外国人従業員を雇用している企業担当者様や、海外に家族がいる方は、早めに書類の準備を進めましょう。不安な場合は、税理士等の専門家へ相談することをお勧めします。

