
中小企業が新たな設備投資を行う際に、税制上の優遇を受けられる制度「中小企業投資促進税制」。この記事では、その概要から対象設備、具体的なメリット、適用要件、申請方法まで、経営者や財務担当者が知っておくべきポイントをわかりやすく解説します。
中小企業投資促進税制とは?
青色申告書を提出する中小企業者等が生産性向上や業務効率化のための機械装置などを取得・導入した場合に、取得価額の30%に相当する特別償却または7%の税額控除(※)を選択適用できる制度です。
※税額控除は、個人事業主または資本金3,000万円以下の法人が対象
また、経営力向上計画の認定を受けると100%即時償却を使用することできます。
経営力向上計画の申請について | 中小企業庁
制度の対象者と対象業種
対象者 | ・中小企業者等(資本金額1億円以下の法人、農業協同組合、商店街振興組合等) ・従業員数1,000人以下の個人事業主 ※中小企業者等も個人事業主も青色申告書を提出していること |
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対象業種 | 製造業、建設業、農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業、小売業、料理店業その他の飲食店業(料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する事業については生活衛生同業組合の組合員が行うものに限る。)、一般旅客自動車運送業、海洋運輸業及び沿海運輸業、内航船舶貸渡業、旅行業、こん包業、郵便業、通信業、損害保険代理業及びサービス業(映画業以外の娯楽業を除く)、不動産業、物品賃貸業 |
※以下の事業者は対象外
・発行済み株式の総数または出資の総額の2分の1以上を同一の大規模法人が所有されている法人
・上記の他、その発行済株式または出資の総数または総額の3分の2以上を複数の大規模法人に所有されている法人
・性風俗関連特殊営業を行う事業者
対象となる設備とは?
取得価額が一定額以上で、以下のいずれかに該当する設備が対象になります。
対象設備 | 機械及び装置 【1台160万円以上】 |
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測定工具及び検査工具 【1台120万以上、1台30万円以上かつ複数合計120万円以上】 | |
一定のソフトウェア 【一のソフトウェアが70万円以上、複数合計70万円以上】 ※複写して販売するための原本、開発研究用のもの、サーバー用OSのうち一定のものなどは除く | |
貨物自動車(車両総重量3.5トン以上) | |
内航船舶(取得価格の75%が対象) | |
措置内容 | 個人事業主または資本金3,000万円以下の中小企業 【30%特別償却または7%税額控除】 |
資本金3,000万円超の中小企業 【30%特別償却】 |
※以下の設備類は対象設備から除外
・中古品
・貸付の用に供する設備
・匿名組合契約等の目的である事業の用に供する設備
・コインランドリー業(主要な事業であるものを除く)の用に供する機械装置でその管理のおおむね全部を他の者に委託するもの
優遇措置の内容(選択適用)
優遇措置には以下の2つがあります。
※資本金3,000万円超の中小企業は「特別償却のみ」選択可能
資本金3,000万円以下の中小企業と個人事業主は「特別償却と税額控除のどちらか」を選択適用可能
特別償却 | 特別償却とは 設備取得(または製作)した年度に、通常の減価償却に加えて取得価格の30%の償却を追加で適用できる制度で、減価償却費とは別に経費の計上を行えます。 |
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メリット 取得年度に多額の償却を利用できるため、取得年度の課税所得がその分だけ圧縮され、法人税が軽減されるため、節税効果があります。 | |
注意点 減価償却においては、最終的に取得価額の相当額までしか費用化できません。 特別償却を使うと償却のペースが早くなるものの、将来に償却できたものを前倒し で償却しているだけなので、償却期間全体では法人税の総額は変わらないことに注 意が必要です。 注意点はあるものの、当面の対外的な支出が軽減でき資金繰りの改善にも繋がるの で、利用する価値は高いといえます。 |
税額控除 | 税額控除とは 設備取得(または製作)した年度の課税所得に対する法人税を計算した後に、 取得価額の7%相当額を法人税額から直接控除できる制度です。 ※当期の法人税額の20%が上限 |
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メリット 法人税から直接相当額を控除できるので、特別償却に比べ確実な節税効果があります。 |
申請方法
中小企業投資促進税制を利用する場合、特別な手続きは必要ありません。
ただし申請にあたっての必要書類は、法人と個人事業主によって異なります。
<個人事業主>
・特別償却の場合、青色申告決算書の「減価償却の計算」の「㋬割増(特別)償却費」の欄に特別償却の額を「摘要」の欄に特例名(措法 10 条の3)を記入し、特別償却に関する明細書を確定申告書に添付
・税額控除の場合、明細書を確定申告書に添付
<法人>
・特別償却の場合、法人税の確定申告書に対象設備の償却限度額の計算明細書と適用額明細書を添付
・税額控除の場合、法人税の確定申告書に控除を受ける金額に関する明細書と適用額明細書を添付
◆ 制度適用の注意点
- 当期の法人税額の20%が上限のため、賃上げ税制などで上限まで使用している場合は、税額控除が選択出来ない
- 特別償却と税額控除の併用不可
- 令和9年3月31日までに対象設備の取得等をして指定事業の用に供することが条件
◆ まとめ
中小企業投資促進税制は、特別償却と税額控除という優遇措置を使って、中小企業者等の設備投資を促進する制度です。
うまく利用すれば、事業者として大きな節税効果や資金繰り改善が期待できます。
さらに効果的な設備投資ができれば、生産力向上や売上拡大等にも結びつきます。経営改善や設備の老朽化対策を検討している中小企業は、この制度を上手に活用し節税効果を得ながら事業成長を加速させましょう。
もしご興味があれば、当事務所へ一度ご連絡ください!