<質問事例>会社を精算する際に、残余財産を分配するより退職金のほうが得?

質問趣旨

一人社長の法人ですが、会社を清算したいと思っています。
残余財産が発生しそうですが、残余財産を分配するのと退職金として支給するのと、税金としてはどっちが得でしょうか。

  • 資本金  100万
  • 株式   100株 全株を社長が保有
  • 残余財産 300万
  • 開業から3年経過の非上場株式会社

※実際の数字とは異なります。

清算の際の残余財産を分配する場合

みなし配当

会社を精算する際には、資産と負債を精算していきます。
支払うべき債務をすべて支払ったのちに残った資産を「残余財産」といいます。

残余財産がある場合には、株主に「株式の持ち分割合」に応じて分配し、会社の清算が結了します。

残余財産の分配については、「みなし配当」といって、資本金の金額を超える部分は配当を支払ったと取り扱います。

<資産>
現金   300万円
資本金   100万円
みなし配当 200万円

会社が配当を支払う場合には、20.42%の源泉所得税を徴収して支払うこととなります。

今回のケースでは、200万円×20.42%=408,400円 を引いて、会社から国に納付することとなります。

配当所得

上記みなし配当は、個人所得税において配当所得に該当します。
今回のケースは非上場株式の配当に該当し、「総合課税」となります。

総合課税は、他の所得と合算して累進課税により税額が算定されます。

そのため、他の所得が多いと、税額が大きくなる可能性があります。

退職金として支給する場合

役員退職金については、他の記事でも記載していますので、そちらもご覧ください。

退職金として支給できる金額

今回のケースで、直前の役員報酬を30万円、功績倍率を3倍とした場合に、損金算入ができる役員退職金の上限は以下となります。

30万円×功績倍率3×3年=270万円

税金の計算

  1. 退職所得控除の金額 40万円×3年=120万円
  2. 退職所得の金額   270万円-120万円=150万円
  3. 所得税の金額    150万円×5%=75,000円(+森林環境税)

退職所得は「分離課税」とされています。つまり、他に所得があっても、税率が上がりません。

一番税額を少なくするには

非課税枠を最大限有効活用

税額が少なくするためにはどうしたらよいでしょうか。

  • みなし配当は、資本金を超えた部分なので、資本金の100万円までは所得税の課税対象になりません。
  • 退職所得は40万円×勤続年数である120万円までは課税されません。

上記を踏まえると、100万円は残余財産として、120万までは退職金とするのがいいですね。

残りの80万円は

配当とした場合には累進課税になります。
所得税の税額表は以下となります。

課税される所得金額税率控除額
1,000円 から 1,949,000円まで5%0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで10%97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円 以上45%4,796,000円

退職所得に対する税率は、上記例でいえば5%なので、

(他の所得+退職所得80万)-各種所得控除<195万

だとすればどっちでも変わりませんが、、
他に所得があるのであれば退職金のほうがお得な感じですね。

結論

今回のケースで、300万円残ったとしたら

  • 200万円を退職金として
  • 残りの100万円を残余財産の分配として

支払うのが税金は一番少なくなると思います。

参考になれば幸いです。