
青色申告書を提出する中小企業者等が、
- 1個30万円未満の固定資産を購入し、
- 損金経理(要は経費として経理すること)し、
- 申告書に明細(少額減価償却資産の取得価額に関する明細書)を添付すれば、
- 年間300万円までは固定資産ではなく経費としての計上を認める
という制度ですが、この適用ができるかどうかの相談でした。
相談概要
※内容については多少ぼかしたり脚色している部分があります。
過去、ご自身で申告を行っていた法人の代表者様。
融資を受けようと考え銀行に相談したところ、「決算書や申告書がおかしいから融資するのは無理」と断られてしまった。過年度の申告を修正して、融資を受けたいというご要望。
決算書を見てみると、様々な勘定科目でマイナスの残高になっていたり、銀行の通帳と会計で差異があったりという状況でした。
詳しく見ていくと、
30万円未満の固定資産について、消耗品で処理していることが分かりました。
少額減価償却資産の特例を使って経費に算入しているという認識だったが、特例適用に必要な別表の作成がされていない。この場合にどうなるかを検討してみます。
少額減価償却資産の特例に当てはめて
先に記載た通り、4つの要件がります。
このうち1・2・4の3つはクリア。問題は3の別表添付のみ。
法人税法において、減価償却関連規定には、当初申告要件というのがあります。
<当初申告要件>
納税者にとって有利になる制度の適用を受けるために、当初の申告において“制度の適用を受けることの意思表示”を要求しているものをいいます。この“意思表示”とは、具体的には、当初の確定申告(仮決算による中間申告を含む)において、申告書に一定事項の記載や一定書類の添付をすることをいいます。
つまり、別表添付等の要件を満たさない場合、あとから提出しても適用できませんよ、ということになります。
今回、別表添付していなかったことから、要件を満たさないため、修正申告時に改めて別表を添付したとしても、適用できないということになります。
結論として、どうなるか
例えば、25万円のパソコン(耐用年数4年)を、消耗品として処理し、別表を添付しなかった場合にどのようになるか。
定率法(法定償却方法)で計算すると、償却費は12.5万円となります。
定率法で計算した償却費を超える金額(12.5万円)が、損金不算入となります。
(会計の仕訳)
消耗品費 25万円 / 現金 25万円
(税務上の仕訳)
器具備品 25万円 / 現金 25万円
減価償却費 12.5万円 / 器具備品 12.5万円
最後に
今回は、特例の適用が出来ずに課税所得が増える結果となってしまいました。
特例の適用には、様々な要件が必要になります。
税務署や税理士に相談の上、適切な申告を心掛けましょう!