【2025年版】社員の副業、どこまでOK?中小企業が知っておくべきルールづくりと実務ポイント

「副業したい」と言われたら、どうする?

最近「副業してもいいですか?」という相談、増えていませんか?
人手不足や働き方改革の流れもあり、副業を希望する社員が年々増加しています。

国も「副業OKの時代」として後押ししていますが、会社としてルールが整っていないと、思わぬトラブルや責任を背負うことにも…。

今回は中小企業の経営者が知っておくべき「副業ルール」のポイントを、わかりやすく解説します。

副業は法律上「原則OK」

実は、法律で副業が禁止されているわけではありません。
会社退勤(指揮管理下にない状況)後、どう過ごすかは本人の自由です。

2018年に厚生労働省が出したガイドラインでは、副業・兼業を「原則容認」と明記しています。

とはいえ、副業が本業の妨げになったり、会社に迷惑をかける場合は制限できるとされています。


会社が副業を制限できるのはこんなとき

ケース理由
本業に支障が出る疲労や睡眠不足で勤務態度や集中力が落ちる
競合他社で働くノウハウや顧客情報が流出する恐れがある
社会的信用を損なう反社会的な活動、マルチ商法など
過剰労働になっている法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えてしまう

会社がやるべき「副業ルールづくり」

副業を「認めるか・認めないか」は会社が決めてOKですが、いずれにせよ就業規則で明文化しておくのが必須です!

✍️ 就業規則に入れるべきポイント

  • 副業は原則禁止/許可制(どちらでもOK、明文化が重要)
  • 事前申請制にする(どんな副業か把握できる)
  • 禁止内容の明記(競合、会社の信用を損なう業務など)

税金・社会保険の実務ポイントも忘れずに

副業を容認するなら、従業員にも以下のことを伝えておくと親切です。

内容解説
確定申告が必要年20万円を超える副業収入がある場合は確定申告が必要
住民税でバレる副業分の住民税が本業の会社に通知されることがある
社会保険の加入義務副業でも週20時間以上働けば、社会保険加入対象になる可能性あり

実は複雑…「労働時間の通算義務」とその周辺の制度

副業を認める際に一番ややこしいのが、「本業と副業の労働時間を合算するのかどうか」という点です。


原則:「労働時間は通算される」

労働基準法第38条では、

「同一労働者が複数の使用者のもとで働く場合、労働時間は通算して扱う」
とされています。

つまり、

  • 本業:8時間勤務
  • 副業:4時間勤務

この場合、1日12時間労働となり、法定労働時間(8時間)超過です。


割増賃金(残業代)は「後から雇った会社」が払う

労働基準法では、後に雇用した事業主が、通算によって生じた超過労働に対して割増賃金を支払う義務を負うとされています。

副業先が短時間労働でも、労働時間全体で超えていれば「副業先に残業代支払義務」が発生します。


でも…36協定との関係では分けて扱うことも?

  • 「時間外労働の上限規制(36協定)」については、本業・副業それぞれでカウントする(通算しない)という運用が実務上あります。
  • つまり、割増賃金の支払い義務は通算だけど、36協定の上限規制は個別適用されるケースもある、ということです。

➡ 複雑なので、就業規則や副業申請時に副業の「労働時間」や「働き方」をきちんと確認することが大切です。


社会保険(健康保険・厚生年金)

  • 原則として、適用条件を満たせば、その会社で加入。
  • 副業先で週20時間以上・2カ月以上見込み・月収8.8万円以上などを満たすと2社で加入対象となる場合あり。

雇用保険

  • 原則、主たる勤務先でのみ加入。
  • 65歳以上の場合、マルチジョブホルダー制度もあり。

労災保険

  • 会社ごとに加入。
  • 副業中にケガをしたら、副業先の労災保険が適用されます。
  • ただし、2021年から「複数就業者の労災制度」が拡充され、本業・副業を合算した賃金ベースで補償される仕組みも導入済。

🔍 副業対応で会社がやるべきポイント

対応項目チェック内容
労働時間管理本業+副業の合計時間を確認しておく(通算リスク)
残業代の扱い副業先でも残業になる場合は支払いが必要なケースあり
就業規則労働時間制限・申告制・健康配慮義務の記載が重要
社保・雇用保険条件によって加入対象になるかを確認

副業解禁のメリットもある!

「副業=悪いこと」ではありません。うまく制度化すれば、会社にも良い効果があります。

  • 社員のスキルアップ
  • 採用の間口が広がる(柔軟な働き方を希望する人材を採用しやすい)
  • 従業員満足度アップ → 離職防止につながることも

まとめ|副業時代の「会社ルール」、整ってますか?

副業を認める・認めないにかかわらず、重要なのは…

🔸 就業規則に明確なルールを設けること
🔸 従業員とのコミュニケーションをしっかりとること

会社のスタンスをはっきりさせて、社員にもきちんと説明できるようにしておきましょう!


副業対応のチェックリスト(会社用)

  • 就業規則に副業の取り扱いを明記している
  • 副業申請のフローがある(書面・システム)
  • 健康管理・労働時間の影響を確認できている
  • 税務・保険まわりのリスクを把握している

「副業OKな会社」は、ルール整備ができている会社です。

「副業を認めていいのか悩んでいる」
「社員から申請があったけど、どう対応したら…?」
そんな時は、就業規則・労務管理・税務の視点から一緒に整理してみませんか?

当事務所では、会社ごとの状況に合わせたルールづくりや制度設計のサポートを行っています。
お気軽にご相談ください!